フォーラム98号
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知財研フォーラム 2014  Summer Vol.98
特集 我が国における特許権の行使をめぐる課題
■2014年8月発刊
■定価 2,000円(税込、送料研究所負担)
■年間購読料 8,000円(税込、送料研究所負担)
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 2013年6月7日に閣議決定された「知的財産政策に関する基本方針」では、我が国産業の競争力強化及び国民生活の向上のために、知的財産における世界最先端の国となることが目標とされ、取り組むべき重点課題の1つとして、特許権の行使に関する知的財産紛争解決システム全体が適切に機能しているかどうかを検証することが挙げられております。
 一方で、近年、特許権の行使における問題点として、特に特許権侵害訴訟における差止請求権の行使の在り方や、特許権の安定性などについての議論が活発になってきております。例えば、差止請求権については、標準規格必須特許に基づく権利行使や、NPE(non-practicing entity)による権利行使が世界的に問題となっており、我が国においてもこれらの問題が顕在化する前に検討すべきとの声が挙げられております。また、特許権の安定性については、侵害訴訟において裁判所による特許の有効性判断が可能となったことで、特許権者の防御負担が増大するとともに、特許権が無効化されるリスクが高まり、権利行使の躊躇や発明保護が不十分であるとの認識につながり、イノベーションの促進を阻害しているのではないかとの指摘もなされています。このように、我が国の知財立国に向けて、権利行使における問題点を明らかにし、その解決を図ることが急務とされております。
 そこで、この度「知財研フォーラム」第98号(夏号)では、「我が国における特許権の行使をめぐる課題」と題する特集を組み、知的財産に関わる読者層に我が国の特許権の行使における諸課題について、その問題点や解決策について、新たなメッセージを発信する内容と致しました。是非、ご高覧、ご活用いただければ幸いに存じます。
Contents
巻頭言
山口 雅久 (Masahisa Yamaguchi) 〔中外製薬株式会社 知的財産部長〕
【特集】我が国における特許権の行使をめぐる課題
4 我が国における特許権の行使をめぐる課題
― 企業の立場から権利活用上の課題を概観する ―
  加藤 恒 (Hisashi Kato)
〔三菱電機株式会社 知的財産渉外部長 東京工業大学 客員教授〕
特許権の行使は、どの裁判所が適切か、特許権を制限されることはないかといった最初の関門をクリアすることが、実は大きな成否を握る。企業が特許権を活用しようとする場合、最近の所与の傾向はネガティブな課題が待ち構えているように思えてならず、本稿ではそれを打破する道を検討する。
13 「差止請求権の行使制限」をめぐる三つの「誤解」
 
小塚 荘一郎 (Souichirou Kozuka)  〔学習院大学法学部 教授〕
特許権の侵害があっても権利者による差止請求権の行使は認められないという解決の可能性について、活発な議論が行われている。この問題は特許権と社会全体の利益を調和させる仕組みの一つとして位置づけ、広い視野から考えることが必要であろう。本稿では、そうした検討の手掛かりとして、三つの論点を提起する。
18 我が国における差止請求権の在り方に関する考察
  長澤 健一 (Kenichi Nagasawa) 〔キヤノン株式会社 取締役 知的財産法務本部長〕
本稿は、我が国におけるPatent Assertion Entity(PAE)による特許権の行使、また、標準規格必須特許(SEP)の権利行使について、差止請求権の在り方について考察するものである。筆者はいずれの場合も原則として差止請求権の行使を制限することが望ましいと考えるが、PAEの定義、SEPの権利行使に際して例外的に差止請求権を認める要件、SEPの価値等に関しても考察し、今後の関係省庁による検討の一助としたいと考えるものである。
25 我が国の知財紛争処理システムの魅力とプレゼンスの向上のために
 
江幡 奈歩(Naho Ebata) 〔阿部・井窪・片山法律事務所 弁護士〕
近時、我が国の知財紛争処理システムをより魅力あるものとし、国際的なプレゼンスを向上させるべきとの提言がされている。本稿においては、特許権者が日本で侵害訴訟を提起しない理由について検討するとともに、日本の知財裁判所による紛争解決を促進するための方策について提案する。
【寄稿・連載】
35 判例研究⑭
歌手名・音楽グループ名の商標登録をめぐる状況
― 知財高裁平成25年12月17日判決(平成25年(行ケ)第10158号) (LADY GAGA事件)を題材に―
 
東崎 賢治(Kenji Tosaki) 〔長島・大野・常松法律事務所 弁護士〕
鍋島 智彦(Tomohiko Nabeshima) 〔長島・大野・常松法律事務所 弁護士〕
本判決は、アメリカ合衆国出身の人気歌手名として広く認識されている「LADY GAGA」の文字からなる本願商標について、その指定商品を「レコード、インターネットを利用して受信し、及び保存することができる音楽ファイル、録画済みビデオディスク及びビデオテープ」とした場合、これに接する取引者・需要者は、当該商品に係る収録曲を歌唱する者、映像に出演し、歌唱している者を表示したもの、すなわち、その商品の品質(内容)を表示したものと認識するから、本願商標は、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものといわざるを得ないこと等を理由として、本願商標は、商標法3条1項3号及び4条1項16号に該当すると判断したものである。この判断の枠組みは、歌手名の商標登録出願に関する審決において示されたものを踏襲しており、目新しいものではないが、近時、歌手名の商標登録について異なる考え方も示されており、また、海外における運用の調査がなされる等、歌手名の商標登録について注目に値する動きがあるので、御紹介する。
44 ウズベキスタンにおける知的財産権保護法制
 
執筆:ノディルベック・ヤラシェフ(Nodirbek Yarashev) 〔弁護士法人瓜生・糸賀法律事務所 外国法研究員〕
執筆:宍戸 一樹(Kazuki Shishido) 〔弁護士法人瓜生・糸賀法律事務所 パートナー弁護士〕
近年、ウズベキスタンでは、知的財産権に関連する法の分野において様々な改正が行われている。本稿では、現代のウズベキスタンの知財研法の構築及び整備状況を紹介した上で、同分野の所轄機関である知的財産庁の組織、同分野に関する重要な法令、同国の特許法及び商標法のいくつかのポイントに関して概括する。さらに、同国における知的財産権の保護に関する紛争解決の現状についても若干の検討を加える。
51 中国商標法第三次改正、及び改正商標法実施条例の要点と実務への影響
 
分部 悠介(Yusuke Wakebe) 
〔IP FORWARD法律事務所 代表弁護士・弁理士、
   IP FORWARD China(上海擁智商務諮詢有限公司) 董事長・総経理〕
中国の商標法が、昨年8月30日に約10年の検討期間を経てようやく改正が完了し、本年5月1日より改正法が施行されている。同法は1982年に制定され、今回は3 回目の改正になるが、直近の2001年になされた2 回目の改正が、WTO加盟に伴う、いわば「国際基準」に合せるための改正であったのに対して、今次の改正は、「商標大国」となった中国だからこそ生じる特有の様々な問題に対応するための改正、という色彩が強く、実務上、大きな影響を受ける改正も散見される一方、改正の背景を正確に把握しないと、条文だけを見ても内容を理解することが困難な改正点が多い。現時点においても関連規定の修正が併行して進んでいるが、本拙稿では、今次の商標法改正のポイントを主要な関連規定たる商標法実施条例の主要な改正点や最近の実務変化とともに紹介、解説する。
72 ラテンアメリカにおける工業所有権:適正な均衡を求めて
 
カラペト・ホベルト(Roberto Carapeto) 
〔ブラジル弁護士 早稲田大学知的財産法制研究所(RCLIP) リサーチコラボレータ、
  「ブラジル知財」ウェブサイト 管理者〕
ラテンアメリカにおける知的財産の環境の現状と問題認識を目的に、知的財産保護の起源、そして戦後における工業所有権の活動を中心に、統計を用いて歴史的な観点から分析する。工業所有権保護の安定性はいまだ十分ではないものの、出願環境は次第に整いつつある現状が論じられている。
   82 第81回ワシントン便り
  諸岡 健一 (Kenichi Morooka) 〔(一財)知的財産研究所 ワシントン事務所 所長〕
     知財研NEWS

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