フォーラム99号
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知財研フォーラム 2014  Autumn Vol.99
特集 特許権の戦略的評価
■2014年11月発刊
■定価 2,000円(税込、送料研究所負担)
■年間購読料 8,000円(税込、送料研究所負担)
フォーラム99号 目次(縮小画像) 目次PDF
 本号では、「特許権の戦略的評価」と題した特集を組んでおります。企業の事業戦略、例えば、他者との共同開発、ライセンス、ジョイントベンチャー、M&A等、他者とのコラボレーションにおきましては、特許を中心とした知的財産の取り扱い(価値評価)を主題とした対価交渉は必須となります。ここでは、知的財産の価値をいかに取り決めるかがコラボレーションを成功裡にする為の不可欠な課題になると考えられます。
 一方、自社内の事業活動の中において、広範囲の事業分野で多数の特許権を保有している企業等につきましては、それらの特許権の自社事業への活用の有無を確認した上で、「放棄」または他者への「売却」がなされています。この場合におきましても、それらの特許権の価値評価をいかに定めるかが重要な課題になっています。
 また、昨今では、企業、大学の中で活用されなくなったいわゆる休眠特許の活用を促進させる動きもあり、この場合においても取引対象になる特許権の価値がライセンス契約等において俎上にあがることになります。
 以上のような背景の中で、各々の企業等が、事業活動の基軸となる知的財産権の価値評価をする場合に、どのような視点からの手法を使って評価を行っているかについては、きわめて関心のあるところであると考えております。
 そこで、本特集では、特許権を主とした知的財産権の評価をいかに企業等が考えているか、または他者とのコラボレーションの視点からどのように考えるべきかについて、ご意見を述べていたくことと致しました。
Contents
巻頭言
坂田 信以 (Shinoi Sakata) 〔住友化学株式会社 執行役員(知的財産部担当)〕
【特集】特許権の戦略的評価
3 知財経営の観点から判断した特許権の適正な保有件数に係る戦略的評価
  菊池 純一 (Jyunichi Kikuchi)
〔青山学院大学 法学部・大学院法学研究科ビジネス法務専攻 教授〕
時間とコストに係る数量指標は特許評価のバックグランド情報である。しかし、戦略的評価の場合には、特許権を単体ではなく、知的財産の範囲を越えた「知財」(知的可能性の集合体)のファミリー主義(戦略的群論の 考え)を採択することが望ましい。特許発明に附帯する有用な秘密情報や他の知的財産の存在を確認し、特許法及び隣接制度の制約を勘案して数量指標に裏付けられた質的評価を行う必要がある。特に、グローバル 特許の再編成においてはそのような対応が適正である。
11 特許権等の金銭的評価と会計上の取り扱いについて
 
山田 重嗣 (Shigetsugu Yamada) 〔弁護士法人 瓜生・糸賀法律事務所 公認会計士・税理士〕
多くの企業は多額の知的財産を有しているにもかかわらず、それが財務諸表に適正に開示されていない。これは、知的財産の金銭的な評価方法が確立していないことに加え、そもそも会計基準上、適正な時価での資産計上が求められていないことによる。
本稿での議論を通じて、企業が有する知的財産の実態が適切に開示される仕組みが導入されることを期待したい。
18 知的財産の価値評価についての雑感
― 化学産業の一知財実務家の立場から ―
  伊藤 寛 (Hiroshi Ito) 〔三井化学株式会社 知的財産部長〕
ビジネスモデルの裏付けがない知的財産それ自体には価値はない。知的財産は、それを使って収益を上げる能力がある者が活用して初めて価値となる。評価には、情報の非対称性、前提条件により値が大振れする不安定性など、様々な不確実要素・不安定要素がつきまとう。それを補うのは、卓越した仮説とビジネスモデルの創造的構想力である。
【寄稿・連載】
23 判例研究⑮
ウェブサイトに対するリンクの掲載行為による著作権侵害の成否
―東京地方裁判所平成26年1月17日判決(平成25年(ワ)第20542号・裁判所ウェブサイト)―
 
田中 昌利(Masato Tanaka) 〔長島・大野・常松法律事務所 弁護士〕
山内 貴博(Takahiro Yamauchi) 〔長島・大野・常松法律事務所 弁護士・弁理士〕
平津 慎副(Shinsuke Hiratsu) 〔長島・大野・常松法律事務所 弁護士〕
著作権侵害コンテンツを含むウェブサイトに対するリンクを掲載する行為については、原則として著作権(複製権、公衆送信権)侵害は成立しないとするのが一般的な見解である。本判決は、同人誌漫画の違法ダウンロード用ウェブサイトに対するリンクを含むブログ記事について公衆送信権侵害が成立すると判断したが、これをもってリンクの掲載行為それ自体について著作権侵害を認めた裁判例であると評価するのは早計にすぎるであろう。
31 韓国改正・判例紹介⑧
特許無効事件における特許請求の範囲の解釈の法理
 
李侊稙(Kwang -Jik Lee) 〔金・張法律事務所 弁理士(韓国)〕
38 中国の法改正・判例紹介⑬
「公然実施」の証拠を用いた無効審判請求事案の解析
 
林達劉グループ〔北京林達劉知識産権研究所 北京林達劉知識産権代理事務所〕
 劉新宇(Linda Liu) 〔所長 中国弁理士〕
 張宝瑜 ( Peter Zhang )〔中国弁理士〕
中国において、公然知られる状況または公然知られるおそれのある状況での実施である「公然実施」は、無効審判請求において無効を主張する理由として時々利用されている。しかし、準備不足や不適切さのため、「公然実施」の証拠が無効審判請求において採用されないケースがしばしばある。本稿では、「公然実施」の証拠を有効活用するために、事前にどのような準備が必要であるかについて、事案を通して具体的に紹介する。
44 中国「独占禁止法」執行の新たな動き
― 中国自動車業界における「独占禁止法」の執行状況 ―
 
林達劉グループ〔北京林達劉知識産権研究所 北京魏啓学法律事務所〕
 魏啓学(Chixue Wei) 〔中国弁護士・弁理士〕
 陳傑(Sai Chen)〔中国弁護士〕
 王洪亮(Holy Wang)〔中国弁護士〕
中国では、昨年より「独占禁止法」の法執行が強化され、その執行規模と力がますます強大になっている。特に最近、自動車関連業界において価格カルテルの締結による独禁法違反をした日本企業12 社に対して12億元以上の制裁金を科したことは、業界の話題になり、大きな注目を集めた。本稿では、主に①「独占禁止法」執行の現状及び傾向、②「独占禁止法」執行に関する法的分析、③「独占禁止法」執行の発展趨勢下における経営者の留意点について紹介する。
53 審判官に聞く ― 機械編
 
講師:紀本 孝(Takashi Kimoto) 〔特許庁 審判部第16部門 (熱機器) 審判長〕
問題提起者 :今井 優仁(Masahito Imai) 〔ホーガン・ロヴェルズ法律事務所外国法共同事業 弁護士〕
平成26年5月12日、東京弁護士会知的財産権法部において、特許庁審判部第16部門(熱機器)の紀本孝主席審判官(注1)により、同部部員の今井優仁弁護士からの問題提起に回答いただく形式で、「審判官に聞く―機械編」と題する講演がなさ れた。特に機械分野の発明について、発明の進歩性の判断に先立ちなされる引用発明との相違点の認定の在り方に焦点を当てている。進歩性の判断における引用発明の認定、相違点の認定などにおける技術的思想との関連性についての考え方について示唆に富むものであり、その要旨を紹介する。
(注1)所属及び肩書きは当時のものであり、現在は、特許庁審判部第16部門の審判長である。
61 審判官に聞く ― 化学編
 
講師:小柳 健悟(Kengo Koyanagi) 〔特許庁 審判部第12部門(一般機械、組立製造)審判長〕
問題提起者 :日野 真美(Mami Hino) 〔阿部・井窪・片山法律事務所 弁理士 外国法事務弁護士(ニューヨーク州)〕
平成26年6月13日、東京弁護士会知的財産権法部において、特許庁審判部第18部門(素材加工、金属電気化学)(注1)の小柳健悟審判長により、同部部員の弁理士・外国法事務弁護士(ニューヨーク州)の日野真美氏からの問題提起に回答いただく形式で、「審判官に聞く―化学編」と題する講演がなされた。特に化学分野の発明において少なからず見られる数値限定発明の進歩性の判断の在り方に焦点を当てたものである。数値限定発明の進歩性の判断における技術的思想の捉え方などについて、大変、示唆に富むものであることから、その要旨を紹介する。なお、具体的には、数値限定についての一般的な質問に回答いただき、かつ、2件の検討事案をふまえた質問に対する回答をいただいた。最後に、最近の関連する裁判例の紹介がされた。
(注1)所属及び肩書きは当時のものであり、現在は、特許庁審判部第12部門の審判長である。
   70 第82回 ワシントン便り
  今村 亘 (Wataru Imamura) 〔(一財)知的財産研究所 ワシントン事務所 所長〕
   80 知財研NEWS

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