フォーラム101号
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知財研フォーラム 2015  Spring Vol.101
特集 知財研フォーラム誌100号によせて
■2015年5月発刊
■定価 2,000円(税込、送料研究所負担)
■年間購読料 8,000円(税込、送料研究所負担)
フォーラム101号 目次(縮小画像) 目次PDF
 本号では、「日本企業の海外ビジネス展開と知財戦略・知財交渉~それらの課題と対応~」と題した特集を組んでおります。経済のグローバル化や新興国市場の拡大等を背景に、我が国企業によるグローバル展開は進展しています。その上、IT技術の進展による技術情報の流通加速化に伴い、新興国企業によるキャッチアップも早まりつつあります。このような状況においては、自社事業防衛のために、単に各国に多数の特許を出願して権利化するような従来型の知財マネジメントでは競争力の維持が困難な状況になってきています。
 そのような中、グローバル市場における有力企業は、様々な知財マネジメントを行うことによって、競争力の維持を図っています。例えば、R&Dが現地化することによる現地法人で生まれた発明に関しては、出願管理、親子会社間の契約に基づく送金など、各国の特許法のみならず税法に関する知見をも必要としております。
 以上のような状況で、各々の企業がどのような知財マネジメントを行っているのかについては、きわめて関心のあるところであると考えております。
 そこで、本特集では、グローバル知財マネジメントについて、企業、税理士、弁護士など様々な視点からご意見を述べていたくことと致しました。是非ご高覧、ご活用いただければ幸いに存じます。
Contents
巻頭言
永松 荘一 (Soichi Nagamatsu)
〔株式会社リコー 常務執行役員 知的財産本部長〕
【特集】日本企業の海外ビジネス展開と知財戦略・知財交渉―それらの課題と対応―
4 製薬企業におけるグローバル事業展開と知財管理
  森田 拓 (Hiroshi Morita)
〔アステラス製薬株式会社 知的財産部長〕
製薬企業は、1つの製品(新薬)を世界中で販売することを目指すが、各国の薬事制度の下で、新薬を発売できる時期も特許権の積極的な行使(enforcement)が必要となる時期も国によって大きく異なってしまう。また、新薬は物質特許で保護されるため、特許期間中は1社が販売を独占するものの、特許満了とともにジェネリック医薬品が市場に参入することとなる。このような状況の中で当社は、三極の知財担当者の連携を軸にグローバル知財管理体制を構築中であり、今後の課題も含めて紹介する。
8 米国におけるコピーライト・トロールの活動実態と日本への示唆
 
福井 健策 (Kensaku Fukui) 〔骨董通り法律事務所 弁護士〕
小林 利明 (Toshiaki Kobayashi) 〔骨董通り法律事務所 弁護士〕
米国では、法定損害賠償金制度の存在等を背景に、時として軽微な著作権侵害を理由に過剰な賠償金請求を行う「コピーライト・トロール」の活動が活発化している。
最近では、従来型トロールの行動パターンに当てはまらないものも見られ、その活動は日々進化している。また、日本でも「トロール的活動」と称される事例が報告されている。本稿では、米国で話題となった事例を取り上げその手法を分析するとともに、日本での実例も紹介する。
18 コンフリクト・ネゴシエーションの条件
  田村 次朗 (Jiro Tamura) 〔慶應義塾大学教授 弁護士〕
グローバル社会では、意見の対立に慌てず、適切に問題解決する「交渉力」が必要である。交渉学は、理不尽な批判、反論に適切に対処し、権利侵害など対立の激しいコンフリクト状態で陥る、決裂か、譲歩かという視野狭窄から脱却する手法を提示するとともに、コンフリクト状況でのマインドセットの転換に必要なフレーミング技法、深刻な対立から和解へと至る「裏口のドア」のアプローチについて具体例を交えて解説する。以上を通じて、安易な譲歩を避け、最良の合意へと至る交渉学のアプローチの全体構造を提示する。
26 知財、税、移転価格と日本でのビジネス
  Fabrizio Lolliri 〔ホーガン・ロベルズ法律事務所 税理士 欧州責任者(移転価格)〕
【寄稿・連載】
35 判例研究⑰
不使用商標に係る商標権に基づく差止請求と権利の濫用及び商標法50条1項の「通常使用権者」の意義について
― 東京地方裁判所平成26年10月30日判決(平成26年(ワ)第768号)・裁判所ウェブサイト―
 
松田 俊治(Shunji Matsuda) 〔長島・大野・常松法律事務所 弁護士〕
澤田 将史(Masashi Sawada) 〔長島・大野・常松法律事務所 弁護士〕
登録後3年以上使用されていない、いわゆる不使用商標に係る商標権に基づいた差止請求等の権利行使を認めてよいか否かについては学説上議論がされており、既に、いくつかの裁判例も存在していた。本判決は、商標登録の取消審判請求がされ、取り消されるべきことが明らかである場合には、当該商標権に基づく差止請求は、権利の濫用に当たると判断したという点で、実務上重要な意義がある。また、本件では、通常使用権者による使用があったという主張により、不使用の事実が争われたが、裁判所は、商標権者から禁止権行使の猶予を受けたにすぎない者は、商標法50条1項の「通常使用権者」に当たらないとの判断を示している。この点については従来あまり議論がなされていない論点について、新たな判断を示したもので、その点からも実務上、注視すべき裁判例である。
48 韓国改正・判例紹介⑨
最近の韓国特許・商標の法制度改正について
 
金鎮伯(Jin Baek Kim) 〔金・張法律事務所 弁理士(韓国)〕
朴宣映(Sun-Young Park) 〔金・張法律事務所 弁理士(韓国)〕
56 中国の法改正・判例紹介⑭
中国音声商標に関する出願及び審査
 
林達劉グループ〔北京林達劉知識産権研究所 北京魏啓学法律事務所〕
 魏啓学(Chixue Wei) 〔中国弁護士・弁理士〕
 耿秋 ( Nancy Geng)〔中国商標弁理士〕
音声商標は、非伝統的な商標の一種類で、聴覚で情報を伝えることによって商品又は役務の出所を識別する視認不可能な標識である。国際的には、米国、EU、オーストラリア、ロシア等の国はすでに、音声商標の出願を受理しているところ、中国でも、2014年5月1日より正式に施行された第3回改正「商標法」において音声商標を明確に導入し、中国商標局は、2015年3月までに140 件あまりの音声商標を公開している。これらの公開データと関連法律規定を結び付けることで、音声商標出願の特徴、方式審査及び実体審査への要求及び後続手続における留意点をまとめた。少しでもご参考になれば幸いである。
65 遺伝子組換え植物の栽培と同植物に係る特許権の消尽
― Bowman v. Monsanto Co. et al, 569 U.S. _(2013) (合衆国最高裁2013年5月13日判決)の評釈 ―
 
田中 孝一(Koichi Tanaka) 〔最高裁判所調査官〕
合衆国最高裁判所は、2006年、いわゆるクワンタ事件判決(Quanta Computer, Inc. v. LG Electronics, Inc., 553 U.S. 617, 625( 2008))によって、特許権者(実施権者を含む)が特許の対象たる物を販売した場合、それが「許可された最初の販売」(the initial authorized sale of a patented article)に当たるときは、当該特許対象物に対する特許権は消尽するという法理を再確認した。本判決は、上記の場合に、①特許権者が販売した特許対象物が「遺伝子組換え植物(大豆)の種子(タネ)」であり、②その有する「特定の除草剤に耐性あり」との特徴が、「親世代」→「子世代」→「孫世代」へとそのまま引き継がれる特質があり、こうしたことから、③特許権者(譲渡人)が当該「大豆の種子」(親世代)の販売に際し譲受人に対して1回に限って作付けし「子世代」を生産・譲渡することを許諾していたところ、④転得者が、「子世代」をさらに作付けし「孫世代」を生産したという事実関係の下においては、転得者の行為は特許権の消尽の適用範囲外であるとして、特許権者の当該権利行使を肯定したものである。
   71 第84回 ワシントン便り
  今村 亘 (Wataru Imamura) 〔(一財)知的財産研究所 ワシントン事務所 所長〕
     知財研NEWS

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