知財研フォーラム 2011 Autumn Vol.87(2011年11月発刊)

フォーラム87号
 本号では、「日中米における教唆・幇助行為と間接侵害」と題した特集を組んでおります。
 ネットワーク社会、水平分業化が進展し、実施行為が複雑化する中、直接侵害では単純に争えない実施行為が増えてきているものと思われます。そのような実施行為として本号では教唆・幇助行為と間接侵害行為に焦点をあて、どのような教唆・幇助・間接侵害行為が特許権ならびに著作権において問題となるかを、日本企業等にとって関心の高い中国や米国の動向も含めて、紹介しております。
 また、限定説と非限定説とが対立するプロダクト・バイ・プロセス・クレームに関して、知財高裁大合議で審理することが決定した「プラバスタチンナトリウム事件」や、今号より数回に亘って連載予定の「中国模倣対策法実務」についての寄稿も掲載しております。
Contents
巻頭言
西本 裕(にしもと ひろし)〔日本電気株式会社 技術・知的財産統括本部長〕
【特集】日中米における教唆・幇助行為と間接侵害
3 特許法における教唆・幇助行為と間接侵害
  潮海 久雄(しおみ ひさお) 〔筑波大学大学院ビジネス科学研究科教授〕
プログラムおよびネットワークやシステム関連発明では実施行為が多種多様で、間接侵害行為と教唆・幇助行為の区別は実態として困難である。アメリカの裁判例は積極的誘引(教唆)の意図を厳格に解しており、執行の範囲も明確でなく、また、近年増加している共同直接侵害を適切に規制できない。事前抑止などの政策的性格のうすいわが国の不法行為法のもとでは、特許間接侵害規定への教唆・幇助規定の導入は慎重に検討すべきである。
11 特許発明を実施しない態様で納品された製品による間接侵害の成立
 
松田 俊治 (まつだ しゅんじ)〔長島・大野・常松法律事務 弁護士〕
上田 一郎 (うえだ いちろう)〔長島・大野・常松法律事務 弁護士〕
本誌の特集テーマである「教唆・幇助と間接侵害」に関連する裁判例として、「のみ」型間接侵害(特許法101条1号・4号) につき、特許発明を実施しない態様で製品が納品された場合であっても、なお「その方法の使用にのみ用いる物」(同条4号) に当たるとして間接侵害の成立を認めた点に特徴がある上記判決を取り上げる。「のみ」型間接侵害の成立範囲及び「のみ」要件の判断手法に関して注目すべき裁判例といえよう。
23 中国における共同侵害及び特許間接侵害
 
梁 熙艶 〔三協国際特許事務所 法学博士 中国専利代理人〕
中国における特許間接侵害者への責任追及は、民法通則130条で定められている共同侵害の法理が法的根拠となる。特許法に間接侵害に関する規定が設けられていないため、共同侵害の法理を特許間接侵害案件に適用する際に、間接侵害の対象及び成立要件の運用基準にばらつきが生じている。
35 教唆侵害及び寄与侵害の立証
-Global-Tech Appliances v. SEB事件判決により立証するためのハードルは高くなる-
 
服部 健一 (はっとり けんいち)〔WHDA法律事務所 米国特許弁護士〕
スコット M ダニエルズ 〔WHDA法律事務所 米国特許弁護士〕
井手 久美子(いで くみこ)〔WHDA法律事務所 米国弁護士〕
米国の特許侵害には、直接侵害になる文言侵害と均等論侵害、そして修理と再生(非侵害と侵害)の問題、更に間接侵害には教唆侵害と寄与侵害があり、複雑多肢である。最近の最高裁のGlobal-Tech判決は、教唆侵害の判断基準は、「故意に無視していた(willful blindness)」という、無謀さ(recklessness)や過失(negligence)以上のものであることを明確にした。このことから、外国企業に対する米国における教唆及び寄与侵害訴訟に変化が生じること が予想される。
40 著作権侵害の教唆・幇助・間接侵害
 
奥邨 弘司 (おくむら こうじ)〔神奈川大学経営学部 准教授〕
我が国において、著作権侵害の教唆、幇助、間接侵害を論じる際には、差止請求と損害賠償請求のいずれに関する議論かに留意する必要がある。後者は、概ね不法行為の問題として処理できるが、前者は、果たして教唆などをする者に対してそれを行えるのかという問題がある。 従来は、カラオケ法理を代表とする規範的侵害主体論で対応してきたが、まねきTV事件・ロクラクⅡ事件の両最判は、その傾向に影響するのだろうか。本稿は、以上について概観するものである。
【寄稿】
50 我が国の高度経済成長期の 知的財産政策を振り返って
 
小林 徹(こばやし とおる)〔特許庁知的財産研究官〕
現行特許法等の基礎である昭和34年法は、「適切な権利付与と保護の強化」をめざし、高度経済成長の本格化と軌を一にするタイミングで整備された。その後、技術革新の進展、消費生活の向上等による出願数激増により、増員等の努力にもかかわらず、未処理案件は累積し、特許庁は、息つく間もなく、審査請求制度の導入等再度の制度改正に取り組むこととなった。こうした高度経済成長期の知的財産政策の軌跡から学ぶべきことは多い。
57 プロダクト・バイ・プロセス・クレームの権利範囲の解釈について
-プラバスタチンナトリウム事件の大合議審理に際して-
 
北原 潤一(きたはら じゅんいち)〔阿部・井窪・片山法律事務所 パートナー弁護士〕
知財高裁は、先頃、プロダクト・バイ・プロセス・クレームの権利範囲の解釈を論点とする特許権侵害訴訟であるプラバスタチンナトリウム事件を大合議で審理することを決定した。本稿では、この事件の第1審判決の概要と知財高裁における争点を紹介するとともに、非限定説と限定説の議論の対立点とあるべき方向性について考察する。
【連載】
67 中国模倣対策法実務における周辺関与者に対する法規制について
 
分部 悠介(わけべ ゆうすけ)〔IP FORWARD 代表・弁護士〕
島田 敏史(しまだ としふみ)〔IP FORWARD 模倣対策部・弁護士〕
中国の模倣品問題は、中国でビジネスに関わる全ての日本企業にとっての大きな問題となっているが、近時、模倣業者のネットワーク化が進行し、模倣業者に対する教唆、幇助、間接侵害行為等を通じて、周辺でこれに関与する者に対して、どのような法的責任が追及できるか、という点が実務上、問題となってきている。このような背景の下、権利者企業が有効な対策を立てられるよう、本稿で、関連法規制、実務動向を紹介する。
74 裁判所が遺伝子組換え植物品種の栽培等の差止請求を認容するための要件
 
尾島 明(おじま あきら)〔東京地方裁判所判事〕
安達 奈緒子(あだち なおこ)〔みずほ証券・弁護士〕
合衆国最高裁判所は、2006年5月15日、いわゆるeBay判決によって、裁判所がビジネス方法の特許を侵害する行為の差止請求を認容するための要件として、特許侵害行為であってもその特殊性を否定し、伝統的なエクイティ(衡平法)におけるインジャンクション(injunction)を命ずる場合の原則である4要件の充足が必要であるとした(eBay Inc. v. MercExchange, LLC, 547 U.S. 388 (2006) )。 本判決は、行政庁が法定の必要な手続を経ずに出した処分(遺伝子組換えをした植物品種に関する行政庁の規制撤廃措置)が無効とされた場合に、裁判所が当該植物品種を開発し、販売する会社に対して、当該植物品種の栽培、販売等を禁ずることを内容とする差止命令を出すときにも、eBay判決と同様に、差止請求をする原告にお いて、エクイティにおける伝統的4要件を立証することが必要であるとしたものである。 本稿は、この判決の内容を紹介し、評釈をするものである。
79 韓国の法改正・判例紹介④
事後的考察により進歩性を否定した 特許法院判決を破棄した事例
―大法院2011年2月11日言渡2009ホ6526判決 ―
 
金 容甲〔金・張法律事務所 弁護士(韓国)〕
83 中国の法改正・判例紹介⑤
ソニー・エリクソン(中国)と 劉建佳間の 「索愛」商標行政争議事件について
 
〔北京魏啓学法律事務所〕
   87 第70回ワシントン便り
  諸岡 健一(もろおか けんいち) 〔(一財)知的財産研究所 ワシントン事務所 所長〕
         知財研NEWS

▲このページの先頭へ