フォーラム96号
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知財研フォーラム 2013  Winter Vol.96
特集 我が国の食文化・食産業の海外展開と知的財産
■2014年2月発刊
■定価 2,000円(税込、送料研究所負担)
■年間購読料 8,000円(税込、送料研究所負担)
フォーラム95号 目次(縮小画像) 目次PDF
 社会情勢が急激に変化する中、状況に応じた適切な特許制度の在り方や企業における知財戦略を検討するためには、当該制度や戦略の中核となる「特許(権)」に対し、現在そして近い将来において何が求められるのか、を理解することが重要といえます。しかし、特許制度の関係者は多種多様であり、それぞれの者が特許に対して求めるもの、言い換えれば、それぞれの者が「真に良い特許」と考えるものも、また多種多様であることが考えられます。
 例えば、技術的価値の高い発明を保護する特許こそが産業の発達に寄与する「真に良い特許」である、或いは、権利範囲が広くてかつ法律的に安定した特許が「真に良い特許」である等の従来どおりの考え方もあれば、イノベーションの促進が求められる現在、技術的価値がさほど高くなくとも、実用化される発明を内容的にも時期的にも十分に保護する特許こそが「真に良い特許」であるという考え方や、或いは海外での権利取得やライセンス収入に資する特許こそが「真に良い特許」とする考え方もあるのではないでしょうか。
 そこで、本特集は、学者、特許庁、企業、弁理士、弁護士等の特許制度に携わる様々な立場の方々が考える「真に良い特許」について、自由に意見を述べていただき、これにより、関係者間の相互理解を深め、今後の特許制度の在り方や企業における知財戦略を検討する際の参考資料となるべく企画いたしました。
Contents
巻頭言
長澤 健一 (Kenichi Nagasawa) 〔キヤノン株式会社 取締役 知的財産法務本部長〕
【特集】真に良い特許とは
3 大学における知財教育の現状と社会への接続
― 知財創出から戦略的活用まで見通した人材育成 ―
  木村 友久 (Tomohisa Kimura)  〔山口大学 大学研究推進機構 教授〕
強い特許の定義を企業等の事業体で中長期的な収益を呼び込むものと設定し、そこに至る戦略的技術開発遂行人材の育成に関する大学での実践を扱う。特に、知財人材の母数を拡大する方策として知財教育の教養課程における必修化を実現した事例を具体的に紹介する。
19 権利活用に資する質の高い特許権とは
 
笹野 秀生 (Hideo Sasano)  〔特許庁 審査第一部 調整課 品質監理室長〕
特許制度は産業の発達に寄与することを目的としている。その目的の達成のためにはこの制度を利用して取得された特許権が市場で活用され、イノベーションの促進に貢献する必要がある。このような活用に資する特許権は、法的な安定性を有する強さと、出願人の開示の程度や発明の技術レベルに見合った権利範囲の広さとを備え、権利行使の際に役に立つものである必要がある。
27 会社経営に貢献する特許を作り込む
  萩原 恒昭 (萩原 恒昭) 〔凸版印刷株式会社 法務本部 本部長〕
企業にとって、良い特許とは「使える特許」に他ならない。「使える特許」を取得するためには、出願時、或いはオフィシャルアクション時等に技術や市場の状況を適切に捉え、「特許請求の範囲」を必要に応じて作り込んでいかねばならない。また、経済の急激なグローバル化に対応して、特に中国を含むアジア諸国を意識して、創出された発明を特許出願するか秘匿するかの所謂オープン/クローズ戦略をこれまで以上に緻密に実施していく必要がある。
33 最近の判決に見る 「訴訟で勝つことのできる特許」のヒント
 
日野 真美 (Mami Hino) 〔阿部・井窪・片山法律事務所 弁理士 外国法事務弁護士(ニューヨーク州)〕
真に良い特許とは「訴訟で勝つことのできる特許」である。独占権としての実効を担保するためには、「訴訟で勝つことのできる特許」であることが必要である。本 稿では、訴訟の視点に立って具体的にどのような点に留意すべきかのヒントを探るべく、最近の特許侵害訴訟の判決を検討した。
41 薮の中の特許群像 ―特集 「真に良い特許とは」に寄せて―
 
飯島 歩 (Ayumu Iijima) 〔北浜法律事務所 弁護士〕
  特許法制は、権利者と利用者の一対一対応を前提にミクロ的最適化を目指し、利用者はそれに適応した「良い特許」を生み出すことに努めてきた。他方、WTO体制確立後の特許制度の普及は、技術の偏在を徐々に縮小させ、特許の量を爆発的に増加させつつある。「真に良い特許」の意味は法目的から導かれるべきであるが、その適合性は、このようなグローバルな産業構造の変化と制度が織りなす特許群像の挙動によって決定されるべきである。
【寄稿・連載】
51 判例研究⑫
いわゆる「自炊代行」業と著作権侵害の成否について
― 東京地方裁判所平成25年9月30日判決(平成24年(ワ)第33525号)・裁判所ウェブサイト(①事件)、 東京地方裁判所平成25年10月30日判決(平成24年(ワ)第33533号)・裁判所ウェブサイト(②事件) ―
 
松田 俊治(Shunji Matsuda) 〔長島・大野・常松法律事務所 弁護士〕
東崎 賢治(Kenji Tosaki) 〔長島・大野・常松法律事務所 弁護士〕
井上 聡(Soh Inoue) 〔長島・大野・常松法律事務所 弁護士〕
顧客からの依頼で本や雑誌の内容をスキャナーで読み取り、電子デー タ化するいわゆる「自炊代行」業の法的評価は、使用者自身による私 的複製を適法としている著作権法30条1項の文言に照らすと、複製(ス キャン)行為の主体を、「自炊」を依頼する顧客と代行業者のいずれと 捉えるのかによって、結論が分かれることになる。①事件判決は、いわ ゆる「自炊代行」業と著作権侵害の成否について判示した初めての判 決であり、②事件判決は、①事件と同一の原告が、①事件とは異なる「自 炊代行」業者らを被告として提訴した事案に係る判決である。両判決は、 ロクラクⅡ事件最高裁判決(最高裁平成23年1月20日判決・民集65巻1 号399頁)の判旨を引用して、「自炊代行」業者が複製の主体である と判断しており、ロクラクⅡ事件最高裁判決以降の著作権侵害主体の 判断枠組みを示すものとして、実務上重要な意義を有する。
66 私的複製における複製主体 ― 自炊代行事件を題材として ―
 
石井 美緒(Mio Ishii) 〔明治大学兼任講師 弁護士〕
平成25年9月30日及び同年10月30日の東京地裁判決は、書籍の裁断・電子ファイル化(自炊)を代行するサービスを違法であるとした。しかし、自炊代行は、私的使用目的による複製(使用する者が複製することを文言上要求している)の趣旨に反するものとはいえず、あるいはその制度趣旨も当初のそれと変容している面もあることから、その類推解釈を試みる必要があると思われる。
77 韓国改正・判例紹介⑥
特許無効抗弁に対する再抗弁としての「特別な事情」と訂正
― ソウル中央地方法院2013年2月5日言渡2011ガ合138404判決及びソウル中央地方法院   2013年5月20日付2012カ合515決定を中心に ―
 
金容甲 (Yong-Gab Kim) 〔金・張法律事務所 弁護士(韓国)〕
崔昇宰(Sung-Jai Choi) 〔金・張法律事務所 弁護士(韓国)〕
85 中国商標法第三次改正の要点と実務への影響
 
分部 悠介 (Yusuke Wakebe)
〔IP FORWARD法律事務所 代表弁護士・弁理士
 IP FORWARD China(上海擁智商務諮詢有限公司)  董事長・総経理〕
中国の商標法が、昨年8月30日に、約10年の検討期間を経てようやく改正が完了し、本年5月1日より改正法が施行される予定である。同法は1982年に制定され、今回は3回目の改正になるが、直近の2001年になされた2回目の改正が、WTO加盟に伴ういわば「国際基準」に合せるための改正であったのに対して、今次の改正は、「商標大国」となった中国だからこそ生じる、特有の様々な問題に対応するための改正という色彩が強く、実務上、大きな影響を受ける改正も散見される一方、改正の背景を正確に把握しないと、条文だけを見ても内容を理解することが困難な改正点が多い。
本拙稿では、今次の改正のポイントと実務への影響を、現在改正作業が併行して進んでいる商標法実施条例の最新の改正動向も紹介しつつ、解説する。
   117 第79回ワシントン便り
  諸岡 健一 (Kenichi Morooka) 〔(一財)知的財産研究所 ワシントン事務所 所長〕
      知財研NEWS

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