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平成22年度調査研究の概要

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【特許庁産業財産権制度問題調査研究】

1. 権利行使態様の多様化を踏まえた特許権の効力の在り方に関する調査研究

 特許権の財産権としての価値への関心の高まりを受け、その権利行使態様が多様化している。技術を独占するのではなく多数の者が共通の技術を利用することが産業全体の発展を促すという産業形態も見受けられる。このような状況を受け、 特許権の効力の在り方、特に差止請求権の行使に対して懐疑的な見方も見受けられるようになっている。

 特許権侵害を認めつつも一定の事情を考慮して差止請求権の行使を否定する可能性について、諸外国における法令および判例を調査したところ、米国では多くの差止請求権を制限する判決が見受けられ、中国でも僅かではあるが見受けられた。英国では法制度上、差止請求権を制限し得るものの特殊な状況で認められたケース以外にはない。ドイツでは、特定の状況下では、ライセンスの許諾を拒否することが違法な行為となる可能性について判示された判決があるが、差止請求権を制限した判決は見受けられない。フランス、韓国、台湾については、差止請求権を制限した判決は見受けられなかった。

 本調査研究では、さらには、我が国おける認識についてヒアリングによる調査を行い、産学会からの有識者で構成する委員会において検討をおこなった。

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2. 出願人等による評価を踏まえた商標審査の品質監理手法に関する調査研究

 商標審査の質の維持・向上の取り組みを進めるためには、個々の案件の品質管理だけではなく、総合的かつ体系的な品 質監理が重要である。そこで、海外知財庁における品質監理の実態調査並びに国内ユーザの意見・要望を聴取・分析する ことにより、外部ユーザの視点に立った商標審査の在り方及びその品質監理の手法を検討するため、本調査研究を実施し た。また、国内において、出願人・代理人合計1,000 か所を対象に、商標審査全般に対する品質評価、個別案件についての 商標審査の品質等の評価、商標審査の品質監理手法について、アンケート調査を実施し、アンケート調査項目をさらに詳細 に把握するために、出願人・代理人合計20 か所に対して国内ヒアリング調査を実施した結果、8 割以上のユーザが最近の 審査官の商標審査手続の「質」については適切と感じているが、出願人・代理人からの審査の質に関する様々な意見、要望 を踏まえ、今後も一層の品質改善・向上に取り組むことが必要であると考える。また、審査順番待ち期間に関する審査の迅 速化については改善が進んでおり、意見書又は補正書に対する再審査の迅速化、審査の品質の維持・向上が今後の課題 であると考える。

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3. 地理的表示・地名等に係る商標の保護に関する調査研究

 TRIPS協定の締結に至る国際交渉以来、地理的表示の保護の問題は、WTO 交渉の中でも、EUを中心とする旧大陸国と米、豪等を中心とする新大陸国との間で懸隔の大きなテーマであり、昨今のEPA/FTA 交渉等においても議論の対象となっている。

 また、アジアの漢字圏諸国の中には、商品の産地と認識されなくても「周知な外国地名」であれば登録を拒絶・取消とするような、我が国や欧米諸国とは異なる法制を有する国もある。産業構造審議会商標制度小委員会においても、「国内外の周知な地名」を含む商標の登録要件に関して、検討することとされている。

 本調査研究は、このような背景を踏まえ、我が国における地理的表示の商標法の下での証明商標制度による保護のあり方、及び商標法における国内外の周知な地名の保護のあり方について、国内ユーザーに対するアンケート調査、国内企業・有識者等へのヒアリング及び諸外国の知財庁等に対する質問票及びヒアリングによる調査を行い、その調査結果を踏まえて、学会・法曹界・産業界等の有識者からなる委員会において分析、検討を行った。

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4. 企業の事業戦略におけるデザインを中心としたブランド形成・維持のための産業財産権制度の活用に関する調査研究

 我が国の競争力が急激に低下している状況下、我が国経済の行き詰まりを打開するため、産業構造ビジョン2010 が作成され、技術で勝って事業でも勝てるよう、我が国企業のビジネスモデルを転換すべきという問題意識が提起されたが、事業で勝つためにはデザインの活用が重要との認識が高まっている。

 他方、デザインによるブランド形成・維持のため、キープコンセプト・デザインの保護強化や、複数の意匠の組み合わせ によってブランド化を進める場合に有効な出願手続の在り方等について検討を進めるべきとの指摘がなされている。

 そこで、企業の事業戦略におけるデザインを中心としたブランドを形成・維持するために有効な意匠制度について、諸外 国及び他の知的財産権制度と比較しつつ検討するとともに、意匠制度の戦略的な活用方法等について取りまとめ、施策検 討のための基礎資料を作成することを目的として、本調査研究を行った。

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5. 今後の登録調査機関制度及び特定登録調査機関制度の在り方に関する調査研究

 特許庁長官が指定する指定調査機関 (公益法人)において、先行技術文献調査を行い、調査結果を特許審査に利用する検索外注は、平成2年より行われていたが、審査請求期間の短縮、特許出願の増加、審査請求率上昇等により、審査順番待ち件数が増加することが懸念されることとなった。

 そこで、平成16年、政府は、民間能力を活用すべく、指定調査機関制度から公益法人要件を撤廃した登録調査機関制度を導入した。さらに、登録調査機関の能力を出願人等も利用できるようにする特定登録調査機関制度の導入も行った。

 現在、審査請求のコブは解消している。特許出願件数、審査請求数も減少し、検索外注件数は、拡大から一定規模に収束する時期への変換を迎えつつある。特定登録調査機関制度に関しては、活用が十分とは言い難い状況となっている。

 そこで、登録調査機関、民間調査会社、海外庁等にヒアリングを行い、今後の制度の在り方に関して検討を行った。

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6. 企業等の知的財産戦略の推進に関する調査研究

 我が国企業の権利取得活動は、欧米主要国企業のそれと比べて国内偏重のままとなっており、無意識に海外に技術情報を流出させ国際的な競争力を低下させているとの指摘がある。その原因として我が国企業の知的財産戦略が上手く機能し ていないことが考えられ、特に知的財産経営の有識者からは、企業の置かれた状況(内部環境、外部環境等)に応じた個別の 知的財産戦略の策定まではできていないのではないか、知的財産戦略の策定・遂行にあたり、企業内における知的財産部門と他部門の連携が充分になされていないのではないかといった指摘がなされている。

 従って、本調査研究では、我が国企業の知的財産部門と他部門の連携を中心に知的財産戦略の推進がどの程度まで進んでいるかの検証、及び、さらなる推進を進めるための各種施策のあり方について検討するために、アンケート調査、及びヒアリング調査を行い、それら結果について本調査研究の委員会で審議いただき取りまとめた。

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7. ユーザーの利便性を向上させる特許審査の運用に関する調査研究

 経済のグローバル化が進展する中、我が国のイノベーションを推進し国際競争力を高める観点から、特許を迅速、的確に 権利化するための体制を整備することが極めて重要になっている。そして、これまで特許庁においては、国際的なワークシェアリングの推進(特許審査ハイウェイ等)や安定した強い権利の付与を目指した各種取組等、特許審査に関して数多くのユーザーの利便性の向上のための運用を行っている。

 本調査研究では、特許庁が行っているユーザーの利便性の向上に資する特許審査の運用について、「日本の特許審査の品質」、「海外での権利取得を支援する制度」、「ユーザーの利便性を向上させるための特許審査」を検討テーマに、ユーザーの利用実態及び潜在的に存在する新たなニーズを把握し、ユーザーの利便性をさらに向上させる特許審査の運用の在り方について分析・検討を行った。

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8. 我が国における発明等の産業化に向けた出願行動等に関する調査

 産業及び経済の発展における知的活動の果たす役割とその重要性は近年ますます高まっている。それとともに、知的活動によって生み出された知的財産を産業化につなげていくための知恵と環境整備の重要性が認識されるようになってきている。技術の産業化に向けて、企業等が、知的財産を保護するための制度をどのような意図で利用し、どのような効果を得ているかを実証的に分析することは、今後の知的財産政策や施策を検討する上で非常に重要である。

 本調査では、これまで蓄積してきた研究の成果を取り入れつつ、特許庁の実施する「知的財産活動調査」やPATSTAT等のデータベースを駆使して、早期審査に関する要件の変更の影響、未利用特許の保有、特許出願戦略の変化、海外出願の意義、情報提供制度・異議申立・不服審判請求・無効審判請求の活用といった企業の知的財産戦略の分析、大学による特許出願傾向、ソフトウェア企業と特許所有の関係及び知的財産活動調査のパネル・データ整備といった合計8つの実証分析を行った。また、知的財産活動調査の調査設計についての見直しに関する検討も行った。

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【特許庁委託産業財産権推進事業】

9. 日本における特許権行使
クリストフ・ラーデマッハー
平成22年度招へい研究者
米国、スタンフォード大学ロー・スクール・トランスアトンティック・テクノロジー・ロー・フォーラム研究員

 特許権が付与されると、その権利者(特許権者)は、特許により保護されるテクノロジーの無断使用者による実施を排除することができる。とはいえ、特許は行使可能であってこそはじめて価値を発揮する。ドイツ、日本及び米国では、特許の権 利行使のための効率的なシステムを整備するための多くの取り組みが行われてきた。これらの国は、特許の権利行使に関する限り、現在最も有力で、また、おそらく最先端の法域である。日本では、2002年2月に小泉元首相によって、特許権保護の強化の重要性が強調された。小泉元首相は、日本を知的財産立国と位置づけ、さらに2002年11月には知的財産基本法の制定を主導した。この法律は、特に2005 年の知的財産高等裁判所の設置につながった。本報告書では、日本において 特許権者が利用できる権利行使関連措置及び救済手段の現状を詳しく分析検討する。また、国内的・国際的な裁判管轄ルールと、さらに、証拠収集手続、国境措置、警告書、仮処分手続及び確認の訴え等権利行使手続の重要な論点について述べることとする。最後に、特許権者の救済手段すなわち差止請求と損害賠償請求の要件と範囲について説明する。

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10. インターネットにおける特許の権利行使-その課題、傾向及びアプローチ
アグニェシュカ・クプツォック
平成22年度招へい研究者
ドイツ・ミュンヘン、マックス・プランク知的財産法競争法及び税法研究所、
競争及びイノベーションに関するマックス・プランク国際研究科(IMPRS-CI)・博士課程研究員、兼MIPLC指導員

 本報告書では、世界規模で事業を行っている会社がインターネットベースの発明の特許権を主張するときに直面する問題に、日本の特許法がどのように対応しているかを調査する。この研究は、グローバル化したマーケットの、二つの要素からなる展開についての観察が動機となっている。インターネットによって容易化された新たなコミュニケーション手段は、特許権侵害を国境の外に締め出す可能性を有している。一方では、グローバルなマーケット、グローバル化されたコミュニケーション及び事業提携によって、侵害者が国境を超えて協力し、各国の法律に抵触しないで発明を実施する方法を考え出す可能性が増加する。これらの進展は、属地的な性質を有する法律、特に知的財産関連法に問題を投げかける。本報告書の目的は、第一に、関連する法的問題点を取り上げ、第二に、日本の法的枠組み内における既存のアプローチについて検討し、第三に、企業に対してより良く、よりイノベーションに役立つ産業政策を提供するための可能なオプションについて検討する。

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11. 知的財産事件における日本の最高裁判所調査官の役割
チャイヨス・オラノンシリ
平成22年度招へい研究者
タイ王国最高裁判所調査官判事

 今日、知的財産を日本経済の成長を促進するために適切に利用することができていない。それは、知的財産がまだ適切に保護されてきていないからであろう。知的財産を保護する試みが、TRIPS協定に基づく知的財産法の調和によって行われてきてはいるが、知的財産がより多くの保護を必要としているように思える。

法執行の調和は、知的財産の保護のための次のステップとして期待されている。知的財産保護を強化するために、知的財産事件において日本の最高裁判所調査官が彼らの役割を担えることは十分認識されている。それでもなお、彼らの役割が知的財産事件における法執行の調和に結び付くかどうかという問題は残っている。この研究では、この疑問を明らかにするために、日本における知的財産の現状と知的財産事件の分野で見いだされる課題を通して、調査官の職務を調査することとした。おそらく、調査官が知的財産事件における法執行を調和させるために彼らの役割を担うことはできるであろう。この目標に至るために、幾つかの提案を行う。

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12. 英国、日本及び中国の詐称通用に関する比較研究
リ・イェン
平成22年度招へい研究者
中国、西北政法大学副教授

 詐称通用(パッシング・オフ)は、被告の商品を原告の商品と偽って通用させる不法行為であり、通常、不実表示手段として原告の表示を用いられる。詐称通用の防止は英国慣習法に起源を有する。しかし、日本や中国など成文法の国において、日本には不正競争防止法が、中国には反不正当競争法がある。これら二つの成文法には英国の詐称通用と類似した規定がある。この研究においては、英国、日本及び中国について詐称通用の比較研究を行う。これら三か国における詐称通用の原則は共通点と相違点がある。これら三か国では、詐称通用は不正競争行為の一つと考えられている。表示の種類、詐称通用の要素、法的責任、及び詐称通用と商標法との関係という四つの観点を比較することによって、詐称通用に関する英国法と日本の不正競争防止法の詐称通用規定は、極めて類似しており、ビジネス状況の変化を満足しているという結論を得た。しかし、中国の反不正当競争法の詐称通用規定は発展途上のように思われる。英国、日本及び中国の間の隔たりを埋めるための示唆を行った。

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13. 知的財産紛争仲裁の利用における課題とその克服
小川和茂
(財)知的財産研究所 平成22年度特別研究員

 産業財産権に関する紛争の解決手続として仲裁を利用することが当事者にとってより魅力的なものと映り、その利用件数が増加するような要件を探求することが、この研究の目的である。あわせて、産業財産権紛争の解決に携わる関係者(代理人、仲裁人、仲裁機関など)にどのような能力が求められるのかについて明らかにすることも目的としている。この研究では、これまでに提示されてきた仲裁利用促進策とその問題点を明らかにし、産業財産権紛争仲裁を始めとして、国際商事仲裁、投資仲裁、及びスポーツ仲裁などの様々な分野における仲裁利用の現状とその特徴、各仲裁機関の規則の比較・分析及び仲裁機関に対するヒアリング等の成果の検討を行い、産業財産権紛争解決制度に対してどのようなニーズが存在しているのかを明らかにし、この研究の目的とした点につき解を与える。

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14. 異なる産業財産権による多面的保護に関する 相乗効果の経済分析
土橋俊寛
(財)知的財産研究所 平成22年度特別研究員

 商標は、製品の質や機能に関する情報を消費者に伝達する。他方で、特許も、製品や企業に関する情報を消費者に伝達することがあり、情報伝達の手段(シグナル)という特許の活用形態は実際に観察される。しかし、経済学は「特許シグナル」を余り分析の対象としてこなかった。この研究では、一つの製品が異なる産業財産権(商標権と特許権)によって多面的に保護されている状況を取り上げ、商標に加えて、特許シグナルの活用が企業の収益に与える影響を経済学的に分析する。商標によって確立された企業のブランド力、特許発明が製品の質に貢献する程度の違い、産業の違いなどの異なる要因が、企業の収益に対する多面的保護の効果に影響していると考えられる。この研究では、これらの要因を「企業特性」「製品特性」「環境特性」の三つに分類し、それぞれの要因が、特許シグナルによる企業の収益をどのように増加させるのかの仕組みを明らかにした。

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15.  オープンソース・ソフトウェア・ライセンスにおける ソフトウェア特許と商標の扱いに関する研究
八田真行
(財)知的財産研究所 平成22年度特別研究員

 Linuxを始めとしたオープンソース・ソフトウェアは、オープンソース・ライセンスの下で自由に利用や改変、再配布が可能とされ、日本でも浸透しつつある。ソフトウェア・ライセンスは基本的に著作権を根拠としたものだが、近年では特許報復条項や商標に関する条項を盛り込み、著作権をてことして著作権以外の産業財産権もコントロールしようとする動きが活発になってきた。加えて最近では、従来、ソフトウェア特許自体を忌避する傾向が強かったオープンソース・コミュニティにおいても、オープンソース向けパテント・プールの形成やオープンなパテント・ライセンスの模索など、戦略的に特許を活用することによって自由な開発を明確に保障しようとする動きも出てきている。この研究では、ソフトウェア特許に関する最新の研究動向や専門家へのヒアリングを踏まえた上で、オープンソース・ライセンスごとに異なる特許や商標に関する条項の要求内容を精査して比較するとともに、オープンソースにおける著作権以外の扱いや様々な事例に関して総合的に整理を行い、今後のソフトウェア開発にどのような影響を与え得るのかを検討した。

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16. 特許権侵害訴訟のパネルデータ分析 -知財高裁法施行による侵害認定の変化に関する定量的分析-
柚木孝裕
(財)知的財産研究所 平成22年度特別研究員

 特許制度は、各国における国内法(日本においては特許法)と国際条約である工業所有権の保護に関するパリ条約により、ほぼ世界全体において機能している。パリ条約4条の2に基づき、各国特許独立の原則がある。特許係争に関す経済分析においては、各国特許独立の原則が、各国の特許裁判における各種条件、特に日本と米国との間において裁判費用の開示面で異なるため、分析上配慮する必要がある。米国における特許係争に関し、特許係争を起こすインセンティブに着目した実証分析の先行研究として、Lanjouw and Lerner (2001)、Lanjouw and Schankerman (2001, 2004)がある。先行研究では、費用変数が事前に係争関係者にとり既知のものである。これは米国特許法の特許訴訟に関する手続きと照合すると整合性が保たれているが、日本への分析を試みる場合、そのままの適用が困難である。本論文では、平成16(2004)年改正特許法によって特許権侵害訴訟に関する裁判形態が大幅に変更された事に着目した。その期間における、特許権侵害訴訟の終局判決における裁判官の意思決定に着目し、定量分析を試みた。

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17. 先使用権の主体的範囲 -フランス法と日本法との比較-
麻生典
(財)知的財産研究所 平成22年度産業財産権専門家派遣研究員

 今日、先使用権制度の有する重要性に疑うところはない。これまでは先使用権の客体的範囲に目が向けられることが多く、その主体的範囲が意識されることは少なかった。しかし、我が国の産業構造においては、先使用権が、発注者に発生するのか、あるいはその受注者である下請会社に発生するのか、それらを決することは極めて重要な問題である。また、先使 用権発生後の主体的範囲の判断においては、先使用権者の補助者や下請会社も主体的範囲に含まれるのか、先使用者 から買い受けている販売業者はその範囲に含まれないのか、といった問題もある。これらの問題が明確でなければ、先使用権制度の活用を促進することはできない。そこで、この研究では、我が国の先使用権制度の起源に関係するフランス法を比較対象として、フランス法からの我が国の先使用権制度の主体的範囲への示唆を検討した。

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18. 知的財産権侵害事件における国際的な差止命令について
的場朝子
(財)知的財産研究所 平成22年度産業財産権専門家派遣研究員

 知的財産権侵害事件における国際的な差止命令は適法に発令され得る。しかし、国際的な知的財産権侵害事件において一般的に問題となる国際裁判管轄の問題の他、差止命令の地理的範囲やその執行等、未解決の問題が少なくない。国際的な差止請求が認められるかどうかの問題は、国際裁判管轄が認められるかどうかだけに関係するわけではない。しかし、特に欧州においては、ブリュッセルⅠ規則やルガノ条約の存在によって、そこで定められる裁判管轄規定に基づいて下 された判決は比較的容易に他国で承認・執行されることを前提として、国際裁判管轄がどの範囲で認められるのかという議論が先行する形で議論されてきた。米国における状況は欧州における状況とは少々異なる。この研究では、まず、どのような場合に国際的な差止命令の発令が求められることになるのかについて概観した上で、主に国際裁判管轄と外国裁判の承認・執行の規律に着目しつつ国際的な差止命令の検討を行った。

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