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平成16年度調査研究の概要

 

【特許庁産業財産権制度問題調査研究】

1. 特許の分割・補正制度の在り方に関する調査研究

 補正制度及び分割出願制度の見直しについては、制度の国際的調和、出願人間の手続の公平性の向上、フロントランナーの戦略的(多面的)な権利取得支援及び権利取得に係る出願人・特許庁の負担の軽減等の観点から、産業構造審議会知的財産政策部会特許制度小委員会特許戦略計画問題ワーキンググループにおいても議論が行われ、「補正制度及び分割出願制度の見直しの方向について」(2004年10月)としてまとめられ、検討課題についての整理がなされるとともに、更なる検討を必要とする課題も指摘された。

 このため、本調査研究においては、分割出願制度についての時期的・内容的制限の緩和についての分析、検討を行うとともに、米国特有の制度である一部継続出願制度及び米国型のグレースピリオドの我が国への導入について検討を行い、更には拒絶理由に対する応答期間等について及び分割出願制度と拒絶査定不服審判制度との関係についても種々の観点から、より具体的な検討及び分析を行い、それぞれについての具体的な提案も行った。

 今後は、本調査研究の結果に基づく更なる検討がなされ、特許制度の具体的施策の立案にあたっての基礎となることが期待される。

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2. 用途発明の審査・運用の在り方に関する調査研究

 医療分野をはじめとする技術の高度化、分野の多様化等により、用途発明に対するニーズが高まっている。本調査研究では、昨年度の調査研究で抽出された課題を整理し、我が国における用途発明の審査・運用の在り方について十分審議し、審査基準改訂に資することを目的とした。

 用途発明においては、様々なクレーム表現が存在し、物のクレームで表現された場合の新規性判断は用途区別説、形態区別説の二つの解釈が考えられた。「用途限定した素材のクレーム」、「合金分野における用途及び性質限定記載」に関しても検討した。また、方法クレームが認められない医薬 用途発明では、方法で限定された物と方法で限定された用途の新規性が判断された後、いずれかが新規である場合を「物の発明」として特許付与性を判断することが妥当であると考えられた。さらに薬理試験データと実施可能要件も含む記載要件の面からも検討し、国際的比較及び法的な面からも検証をした。

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3. 主要国等における産業財産権の設定及び移転に係る手続及びその第三者対抗要件に関する調査研究

 経済活動のグローバル化・ボーダーレス化が進展する中で、我が国の産業の国際競争力を高めるための検討が行われている。中でも、産業財産権の登録簿への申請手続の迅速化は、重要な課題である。

 我が国の現行の登録制度は、諸外国に比較して厳格な証明書を要求する等の負担を与えている可能性があり、移転申請の手続等について諸外国の状況を調査する必要がある。他方、実施権の登録制度はほとんど活用されず、破産等による特許権移転の際に、第三者対抗要件を欠く通常実施権を有するライセンシーの法的地位が不安定化する問題が指摘されている。

 特許庁では、上記手続の迅速化等を図るため、登録申請のオンライン化を検討中であるが、諸外国の登録制度における法的要件、効果等に関する信頼できる文献は、皆無に等しい。

 そこで、本調査研究では、我が国の登録制度の国際的調和を図るため、主要国等における産業財産権の登録制度(計18法域)について、要件事実論の観点を踏まえた調査を行い、併せて情報管理制度の調査を行った。

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4. 小売業商標のサービスマークとしての登録及びコンセント制度導入に対応する審査の在り方に関する調査研究

 本調査研究では、委員会を組織して、日本における「コンセント制度の導入」や「小売業商標のサービスマークとしての登録」及び、これらに関する「現行の審査運用についての具体的な見直しの必要性」について議論した。コンセント制度の導入に関しては、①運用による準完全型コンセント制度の導入、②コンセントは商標法第4条第1項第11号のみ認める、③類似商品・役務審査基準の見直しや第3条第1項柱書の運用の強化が必要等の結論が得られた。小売業商標のサービスマークとしての登録に関しては、①小売りサービスを商標法改正により法で「商標法上の役務」として扱う、②小売りサービスとは商品の品揃え、陳列等の需要者に対する商品購入の便宣の提供のみ(販売を含まない)である、③「総合小売りサービス」のみの保護でスタートすることを検討する、④国際分類第9版の発効に合わせて平成19年1月1日(の出願)から施行する等の結論が得られた。

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5. 特許権の効力の例外及び制限に関する調査研究

 本調査研究は、「試験又は研究」の例外及び強制実施権(我が国における裁定実施権)を2本の柱として、特許権に基づく排他的権利に対する例外及びその制限に係る日米欧及びアジア5か国の現状を検討した。主眼は、汎用性が高く代替性に乏しい上流技術発明に関する特許が他者の商業活動及び次代の研究開発に弊害をもたらす可能性、及び、技術の標準化にとって不可欠な技術に関して特許権を取得した権利者が、標準化プロセスに加わらずに法外なロイヤリティを請求する、権利侵害を申し立てる等の権利行使に伴う問題に関する各国の対応を見ることにある。他方、国際的な平面では、WTO加盟国における、特許権者の許諾を得ずに第三者による発明の使用を認める制度を利用した、他の国家の公衆衛生対策上必要な特許製品の製造、輸出を、TRIPS協定が妨げているとして、一部規定の改正が議論されている。ここでは、議論の進展とWTO加盟国の対応を検討した。

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6. 特許統計の利用促進に関する調査研究

 「知的財産立国」の実現に向けた具体的施策を取りまとめた「知的財産推進計画2004」においては、法学、技術、経済学等の多様なアプローチに基づき、知的財産に関する総合的かつ学際的・横断的な研究を推進すること、及び、ユーザーの多様なニーズに対応した政策展開に資するよう、知的財産政策の企画立案の基礎となる知的財産関連調査統計の幅広い活用を図ることが期待されている。

  本研究は、昨年度の特許統計データの経済学的分析に関する調査研究に引き続き、特許庁の行った知的財産活動調査報告書を用いた企業の知的財産活動の実証分析であるが、製造業の知的財産部門の責任者による知的財産活動の現状報告を勘案しつつ、企業の属する産業分野、技術分野、更には製造する製品などの特性との関係をより明確なものとするための検討を行った。更に、知的財産活動の状況を示す指標の提案と、特許統計の利用促進を図るための今後の課題の検討も行った。

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7. 大学における知的財産の創造、保護及び活用に関する諸問題についての調査研究

 本調査研究では、大学の知的財産の創造、保護及び活用に関する諸問題について広範な観点から検討を行った。第一に、大学における知的財産管理の意義を整理するとともに、効率的かつ実効的な知的財産管理の在り方について、大学の具体的取組の事例を紹介するとともに、知財専門人材育成の面からも検討を行った。第二に、大学における知的財産管理により発生する会計処理の諸問題について、予算上の検討事項や会計上の体系を整理するとともに、特許権譲渡・技術移転等に関する税務上の検討事項を整理した。第三に、特許制度に関連した諸問題として、新規性喪失の例外規定利用上の問題点、大学における研究成果の帰属の問題を検討した。最後に、共同研究に関連した諸問題として、共同研究における企業と大学の問題、学生等の守秘義務契約の問題、外国企業との円滑な契約の在り方について検討を行った。

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8. 諸外国におけるデザイン保護の実態に関する調査研究

 知的創造活動の成果物であるデザインの保護を考える上で、意匠制度がその中心的な役割を担っていることについては疑う余地がないが、デザインが有する多面的な性格から、一のデザイン創作物には、意匠法以外の法令に基づく重畳的な保護が及ぶ場合もある。デザインのより適切な保護を図るべく、我が国意匠制度の在り方について具体的な検討を進めるためには、我が国のみならず、諸外国において、デザイン創作物が意匠制度を始めとする知的財産制度によってどのように保護されているかについて、正しく理解しておくことが不可欠である。

 本調査研究は、そのような理解に資することを目的として、有識者から成るワーキング・グループを設置し、欧州共同体及び欧州諸国、米国、並びに中国について、その意匠制度の基本的な枠組みを概観するとともに、現地協力先や文献等より入手した裁判例の分析を通して、保護対象、保護要件、効力範囲等の意匠保護の実体面における具体的な判断の理念、基準及び手法を明らかにすることに主眼を置いた。また、著作権法、商標法、不正競争防止法等、デザイン保護手段としても機能し得る諸制度について、裁判例に準拠しながら、その適用の実態について、可能な限り、分析、整理を試みた。

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9. 知的財産の保護強化(営業秘密の保護と模倣品・海賊版対策)に関する調査研究

 本調査研究は、「知的財産推進計画2004」の要請により、不正競争防止法による知的財産の保護を強化するために、(1)我が国産業のノウハウ・技術の国外への流出防止対策を目的として、国内で管理されている営業秘密の漏洩に係わる①国外における不正使用・開示行為、②退職者の悪質な不正使用・開示行為、③悪質な行為者に係わる二次的関与者、④悪質な行為者の所属する法人(加害)、に対する刑事罰の導入、及び⑤罰則水準の引き上げ等について検討を行うとともに、(2)模倣品・海賊版の我が国への流入防止対策を目的として、①不正競争防止法2条1項3号の定義規定の明確化、②同2条1項2号、3号への刑事罰の導入、③不正競争防止法侵害物品に対する水際措置(関税定率法)の適用等に関して検討行い、不正競争防止法の改正のために必要な方向性を提示した。

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10. 中小・ベンチャー企業における知的財産の活用方策に関する研究会

 我が国には現在約480万社の中小企業が存在し、我が国の産業基盤を支え、地域経済の担い手として大きな役割を有している。また、ベンチャー企業は、新産業の創出の観点から期待が高まっている。これら中小・ベンチャー企業が、技術を基盤として成長し、発展していくためには、知的財産は必要不可欠な経営要素であるが、資金や人材面等を考えると知的財産の創造、保護及び活用などのあらゆる分野で知的財産戦略を推進することは必ずしも容易ではないと思われる。

   本調査研究では、中小・ベンチャー企業を対象としたアンケート調査を実施し、中小・ベンチャー企業における知的財産に対する取組の実態や知的財産をめぐる問題点につき調査及び分析を行った。また、中小・ベンチャー企業に対する各種支援機関による既存の支援策の整理及び検討を行うとともに、現在実施されようとしている支援策の新たな取組についても調査及び検討を行った。

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【特許庁委託産業財産権研究推進事業】

11. 日米欧における植物保護と知的財産権
ムリエル・ライトブールン
平成16年度招聘研究員
英ロンドン大学 クイーンメアリー知的財産研究所 上級研究員

 2004年6月29日、国連食糧農業機関(FAO)の「食料農業植物遺伝資源に関する条約」(現時点では日本は未署名)が発効した。したがって、同条約を知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)及び植物の新品種の保護に関する国際条約(UPOV条約)と矛盾しない形で実施してゆくための方法を発見すべき喫緊の必要がある。

  工業所有権の保護に関するパリ条約は植物新品種に対する保護を提供していない。一方、1961年に締結されたUPOV条約は植物新品種に対する保護を提供するためのものであり、締結後も数度にわたり改正されている。UPOV条約は、自らが開発した植物新品種の他者による無許諾利用を禁止する権利を育成者(農業者)に与えることを目的とするものである。当初、同条約による保護対象は、特定の自家受精植物(自らの花粉により受粉する植物。菜種、小麦、大麦等)から選抜の方法により得られた種子にのみ限定されていたが、1991年の改正により育成者に与えられる権利が拡大され、条約の適用対象がすべての植物の種類に拡大され、育成者権と特許による二重保護の禁止も廃された。 

 一方、TRIPS条約第27条(3)は、「加盟国は、特許若しくは効果的な特別の制度又はこれらの組合せによって植物の品種の保護を定め」なければならないことを規定している。

 そのような状況の下、米国、日本及び欧州における育成者権及び農業関連特許の保護範囲を理解し、かつ将来の育種活動における「行動の自由(freedom-to-operate)」がどの程度まで認められることになるかを評価することが必要であるだろう。本稿では、①保護範囲、及び②行使のための条件に関して両者を比較する。

 さらに、農業分野におけるバイオ発明の一部に関しては、他のバイオテクノロジー応用分野と同様にパテントプールが権利の利用のための有効な手段となる可能性もある。そこで、米国、日本及び欧州の反トラスト法におけるパテントプールの取扱いについても簡単に触れておいた。

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12. 日米の共同発明に関する法律の比較及び技術移転に与えるその影響について
メアリー・ラフランス
平成16年度招聘研究員
米ネバタ大学ラスベガス校 ウィリアムS. ボイド ロースクール 教授

 本研究では、共同発明特許に関して日米の特許法及び判例を比較し、それらは共同発明特許の帰属、有効性又は行使可能性に関する不安定要因を生じさせたり、共同発明特許のライセンシングや譲渡に関する不当な障害を生じさせることにより、技術移転を妨げるものとなっているかどうかを検討した。両国の制度に相違が見られる場合に関しては、そのそれぞれが有する長所を比較し、さらにかかる相違が両国間の取引に悪影響を与えるものとなりうるかについても検討した。

 共同発明に関する日米間の最大の相違点として、共有特許に係るどのような行為を行う場合に全共有者の同意が必要になるかという問題が存在する。日本では、通常実施権の設定やいずれかの共有者が有する持分の移転を行う際にも全共有者の同意が必要とされているが、米国ではそうでない。一方、米国ではすべての共有者の同意を得ない限りは侵害訴訟を通じた特許権の行使ができないとされている(日本ではそうでない)。したがって、同意要件の対象となる行為については日米間に相違が見られるが、しかし、いずれの場合でもそれが共有特許における各共有者の持分の完全な享有を妨げるものとなりうる点は同じである。

 「共同発明者」に関する定義は両国ともに緻密なものではない。また発明の創造に参加した者のうち誰が共同発明者として指定されるべきかに関する誤りがあった際には、そこに悪意が介在していなくとも、それは特許無効の理由となりうる。米国の場合は、そのような誤りを訂正し特許無効を回避することを可能とする手続も存在するが、日本にはそのような手続は存在しない。 

 最後に、職務発明における「相当な対価」をめぐる最近の日本の判例に照らし考えるところ、今後、それぞれの職務発明者に対する対価の配分を行う際には、各人がそれぞれになした発明への寄与を注意深く特定し数値化する必要があるだろう。一方、米国ではかかる作業は一般的に必要とされていない。

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13. 企業の特許にかかわる活動の業績評価 -特許部門の評価手法と評価基準-
マイケル D. カミンスキ
(財)知的財産研究所 平成16年度招聘研究員
FOLEY & LARDNER LLP (ワシントンDC 東京)  パートナー 特許事務所共同経営責任者 IP事業部長

 この研究の狙いは、企業が特許にかかわる法務部門の業績を評価するために利用できる評価基準または評価手法を明らかにすることである。多くの企業経営者が特許にかかわる自社の業績について把握する方法に大きな関心を寄せている。さらに最近では、株主、市場アナリスト、投資家などの人々も同様の関心を持つようになってきた。IP部門の活動の寄与度をこうした人々に示す必要がある。この研究の狙いは、当初から、研究の成果として、特許に関係する業務の報告に利用できる評価手法の一覧を作成することだった。各社のIP部門の条件に合った評価手法を選択し、業務報告に役立ててもらいたい。発行された特許の総数や過去に行った出願件数など、極めて単純な指標もある。しかしながら、こうした指標以外にも利用可能な指標は多く、中にはそれぞれの企業が置かれている状況に適したものもある。幾つかの要因について考慮すると、すべての企業にとって効果的な指標の組み合わせは考えにくい。指標によってはあまりにも学術的なため、まだ実用的ではないものもある。しかしながら、例えば特許を活用することでリスクを回避できる利益を数量化するための方法など、今後重視すべき指標も取り上げた。また、特許部門の業績を評価するためには、何よりもまず企業の特許と製品との対応関係について把握しなくてはならないことを繰り返し強調した。

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14. 日・米・欧・韓の独占禁止法下における知的財産権ライセンスの研究
韓 志泳
平成16年度招聘研究員
ドイツ ミュンヘン大学 法学博士
(平成18年度招聘研究員)

 知的財産権法は一定期間に限り独占権を付与することを通じて技術革新のためのインセンティブを提供する。一方、競争法は市場における優位な地位の濫用及び経済力の過度の集中を防止することを目指すものである。そのため、知的財産権法と競争法は一見したところは相容れないものであるように見えるかもしれない。しかし、結局のところ、両者は市場経済において技術革新を促進し消費者福利を増進させるという目的を共有している。

 知的財産権の分野においては、知的財産権者は自らの権利を自らで利用することにより、また他者へのライセンスを行うことにより、利益を獲得しようとする。しかし、ライセンス契約はそれが締結された状況やそこに含まれる制限の内容によっては競争法の適用対象ともなりうるし、これに関する判断には多くの複雑な要素が関係してくる。そこで、米国や日本、韓国等の国々は、自らが締結するライセンス契約が反競争的なものと見なされるかどうかを企業自身が予測できるようにすることを目的としてガイドラインを作成している。これに関しては、拡大EUが2004年5月1日から有効なものとして規則772/2004号を公表したことが特に注目される。同規則は、EUにおける技術ライセンスに劇的な影響を与えるものとなることが予想される。

 本稿では、各国のガイドラインに含まれる主な競争阻害要素を概観し、それらのガイドライン及びEUの新競争規則が有する法的な意味合いを検討する。

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15. 知的財産の保護方法の一般原則に関する研究
申 宰昊
平成16年度招聘研究員
法学博士、漢陽大学 仁荷大学 法学部 講師

 知的財産制度は一般的に、ⅰ)知的財産生産者の自然法上の権利を保護する機能、ⅱ)知的財産の生産を刺激し、産業発展を促進する機能、ⅲ)競業秩序を維持する機能を有しているが、本論文においては、知的財産生産者の権利保護機能は他の機能を遂行するための手段として理解する。即ち、知的財産権が自然法上の権利とは別のものであり、またこのような自然法上の権利に対する補償ではないという前題下で知的財産の保護方法に接近している。新しい保護方法を導入するためには、まずは保護の必要性に対する判断が先に行われなければならないが、これは、創作を刺激する、又は投資を誘導し、公正な競争秩序の確立により創出される公共の利益と知的財産の自由な利用を不可能とする人為的制限が引き起こす公衆の損失を比較形量しなければならない、非常に政策的な判断である。また、知的財産の保護方法は保護客体の特性と密接な関連があるが、本論文においては保護客体と関係なく、保護方法によって従属的に決まる権利の内容を分析することにより、新しい保護方法を導入するにおいて保護客体と関係のない一般原則について検討した。このような原則は新しい保護方法において権利化の手続きを最小化する、又は保護の程度を変化させる場合に政策的に考慮できる範囲に対する限界を提示することになる。

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16. 特許侵害における均等論について -中日における法と実務の比較を中心に-
閻 文軍
平成16年度招聘研究員
山東省高級人民法院 判事

 特許保護範囲の合理的な確定は、特許制度における重要な問題である。均等論は、特許の保護範囲を画するために中心的役割を果たしている。均等論は、中国及び日本において受け入れられ適用されている。両国における均等論には同一の部分も、異なる部分もある。本論では法規及び司法実務等の面から中日両国の均等論を比較する。

 本論の主な内容は、両国の法規、均等論適用の歴史と概況、均等論の要件、裁判所による均等論適用、特許侵害訴訟における均等論の当事者による立証責任等である。

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17.情報取引の形態に関する基礎的考察-サイバースペースにおける情報財の保護と自由利用、その法的規整-
小島 立
長期在外研究員
九州大学大学院法学研究院助教授

 サイバースペースの出現は,一方では情報へのアクセスや表現行為,情報発信を容易とする恩恵をもたらしたものの,他方では技術的保護手段の回避を規制する法改正,そして契約による私的な規律の隆盛も相俟って,情報の自由なやり取りや利用を制限する可能性を示すに至っている。

 本研究では,マスマーケットにおける今後の情報取引の形態について考察を進める。主な検討の対象は次の2点である。第1に,契約法理や技術的保護手段との連関。第2に,知的財産法と契約法,そして契約を用いた情報取引を正当化する際にしばしば用いられる価格差別論,これら三者の関係。以上の諸点に注目しながら,情報を利用する際の対価という観点から,情報の流通過程全体を見据えた検討を行いたい。

 また,情報の自由利用という観点においては,近年のアメリカ法における著作権法と表現の自由に関する議論の進展も参照し,知見を得たいと考えている。

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18.発明の包括的な保護を図る制度 ~米国の一部継続出願制度と我が国の国内優先権制度の比較を通じて~
水野 敦
(財)知的財産研究所 平成16年度短期派遣研究員

 本報告は発明の包括的保護の在り方について検討を行ったものである。具体的には米国における一部継続出願(CIP)制度及び我が国における国内優先権制度を中心に、現状における発明の包括的保護のための制度について概観し、仮に我が国に米国の一部継続出願のような出願(以下、CIP型出願という。)の制度を導入した場合の課題や制度の在り方について、出願公開制度との関係を踏まえながら考察を行った。

 我が国においてCIP型出願を先の出願の出願公開前に行うことを認めることは、前向きに検討されるべきであると考えられる。しかし、出願公開後に行うことは、米国のようなグレースピリオドの規定を有さない状況下では、出願人のメリットが小さいものと考えられる。また、第三者の監視負担増加やCIP型出願を意図的に繰り返し行い、関連する出願が係属する状態を長期にわたり作り出すこと等の弊害については十分に検討されるべきと考えられる。

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19.欧州における一元的な特許保護制度に関する研究
松中 雅彦
(財)知的財産研究所 平成16年度短期派遣研究員

 拡大を続ける欧州連合が形成する欧州単一市場は、日本における戦略市場の一つであると同時に、その構成国は重要な特許出願対象国となっている。しかし、昨今の欧州における新たな知的財産制度構築の動向、特に一元的な特許保護制度に関する動向については、今後の議論の行方が極めて不透明であることもあいまって、その内容が日本の出願人に十分理解されているとは言い難い。現在欧州では、共同体レベルでの特許保護制度(共同体特許)にかかる議論と、欧州特許条約をベースとした翻訳のコストダウン(ロンドンプロトコル)および裁判手続の統一(欧州特許訴訟アグリーメント:EPLA)を目的とした議論とが並行して行われている。今回は、欧州連合の構成国および欧州企業がどのような戦略でこれらの一連の議論に関わっているのか、そして日本の出願人はそのような新たな制度構築の動きをどのようにとらえるべきか、という点について検討した結果を報告する。

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20.知的財産権の保護の強さが垂直的関係にある企業間の共同研究開発に与える影響
石井 光
(財)知的財産研究所 平成16年度特別研究員

 本研究は、最終財メーカーと中間財メーカーの垂直的な2産業を考え、知的財産権の保護の強さが最終財メーカーと中間財メーカー間の共同研究開発に与える影響を経済理論的に調査する。知的財産権の影響として、知的財産権の保護の強化が、研究開発スピルオーバーの程度の低下を通して、垂直的共同研究開発に及ぼす影響に焦点を絞る。研究開発スピルオーバーとは、技術や知識が対価の支払いを伴わないで発明者以外に利用されることをという。調査の結果、以下の結論に達した。技術の専有可能性の確保に対する知的財産権の有効性に関係なく、垂直的共同研究開発は技術改善を促進する。しかし、知的財産権の保護が強いと、垂直的共同研究開発における研究開発投資は、垂直的な2産業の全企業の利潤を合計した結合利潤や社会余剰の観点から過大となる場合がある。この結果、知的財産権の保護を強化すると、垂直的共同研究開発の実施は技術改善を促進するが、結合利潤と社会余剰を大きくするとは限らない。

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21.知的財産権に関する国際裁判管轄権
-アメリカ法律協会作成の「国際知的財産紛争の裁判管轄および法選択,判決に係る原則」を中心に-
福本 渉
(財)知的財産研究所 平成16年度特別研究員

 近年、日本でも、国際的な知的財産権侵害訴訟が増えつつある。外国知的財産権に対する適用法規や国際裁判管轄をどのように考えるべきかが問題とされる。日本では、カードリーダー事件以降この問題が盛んに論じられたが、とりわけ管轄について、ハーグ国際私法会議での条約案作成に呼応して、学説上様々な議論が展開されることになった。本報告ではアメリカ法律協会(ALI)が作成中の条文案をとりあげた。ハーグ国際私法会議での議論とそれに対する修正案として作成されたマックスプランク研究所の条文案と比較して、ALIが提案した原則は手続の統合を目指すものであるので、かなり特徴的なものとなっている。長期的に見れば知的財産法の実体法・実質法レベルでの統一は進むであろうから、このような手続の統一は将来必要性が増してくると思われる。本報告では、このような問題関心から、いくつかの注目すべき問題を抽出した。

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22.インターネットにおける知的財産侵害に関する適用規範について
中山 真里
(財)知的財産研究所 平成16年度特別研究員

 近年の企業活動のグローバル化やインターネットの発展により、国境を越えた知的財産の利用が増加し、それに伴い国際的な侵害行為も増大することが予測される。インターネットにおける知的財産の利用にはMP3による音楽コンテンツやビジネスモデル特許、ホームページで広告に用いられるブランドなど様々なものがある。これらの知的財産が複数の国にわたって侵害された場合に、いかなる国の法によって規律すべきか、具体的な事例を設定して検討する。伝統的に知的財産については属地主義の原則が妥当すると考えられ、知的財産の成立・効力・侵害を知的財産の登録・保護された国の法によって判断する見解が支配的である。しかし、今後インターネットにおける利用や侵害の増大に備え、実効的・効果的に権利者の保護を確保し、利用者の利益や各国の政策との調和を目指す妥当なアプローチが必要である。これらの問題を欧米における近年の議論を参考にしながら検討する。

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